STORY.2

 その日僕は一人、夕方の散歩にいそしんでいた。 外は晴れていて、夜風が気持ちよく鼻の先を流れていった。 いつもどおりの道を歩き、いつもどおりの順番でこの街にひとつしかない駅にやって来た。

 そこで僕は、一人の人間のオスに呼び止められた。 どうやら彼は誰かを待っていて、すっかり飽きているようだった。 彼は、僕の事など気にせず話し出した。まだ僕は、散歩の途中なのに・・・。

 「フー遅いなー」「なっ、おまえもそう思うだろ」「まったく困ったもんだな」「それよりお前は、どこの犬だ」「なかなか、いい顔してるな」「散歩の途中か?」「ちょっと、つきあってくれよ」 彼は、勝手に一人でしゃべってる。

 ひとしきりしゃべった後、ちょっと彼は間をおいて空を見上げた。 その顔がとても印象的で、もうちょっとそこにいようと思った。 彼は話を続けた「俺はもう30才になる。 これまで好きなように生きてきた。 これからも変わらないだろう。 バンドは続けるつもりだ。 もうすぐやって来る彼女は、きっと心配している。 それは、わかっている。 安定した生活ってヤツだ。 貧乏だからな。 でもまだ先に進みたいんだ。 ただそれだけだ。 何かをつかみたいだけだ。 でも、金も欲しいよな。 やっぱり。」

 その時、彼女はやって来た。 「じゃ、な。」 二人は僕に手を振ると、ゆっくり歩き出した。 生活と仕事の差は、どこにあるのだろう。 僕には解らない。 だって僕にとって、生きる事が仕事だから。

 僕の主人も同じように悩んでいたのだろうか。 今度、聞いてみよう。 風に乗って、晩御飯のいい匂いがしてきた。 さあ、そろそろ僕も家に帰ろう。



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